入院中或いは退院してからも、隣のベッドの患者さんや近所のお友達から、母は良く言われていました。
「娘さんが看護師で良かったねえ」

「うん」

と屈託なく母は答えておりました。



…しかし。
介護者が看護師とか介護福祉士とかそっち系の専門職だった場合。
それは本当にラッキーなのか。
いや、介護される側でなくて、介護する側に立った場合。

確かに疾患や老化についての知識は専門職でない人より多少詳しいでしょう。移乗の仕方、排泄介助、食事介助、器具の消毒などなど実践的なことにも詳しいでしょう。「親が救急搬送された」と聞いても、専門職でない方より多少は冷静に対応できるでしょう。

だから多分、介護される親の側からすると、悪くない…少なくともデメリットはないんじゃないでしょうか。
ですが介護する側の立場からすると実はアンラッキーだったのではないかと、私は思っています。

なぜなら、
職場での仕事と帰宅しての家での介護作業…体の使う部位、心の使う部位が完全に一致しているからです。
特定部位だけが消耗します。
帰宅しても仕事の疲れは取れない。
仕事に行っても介護を離れて気分転換…にはならない。

私はまもなく退職します。
介護が一段落付くまで看護職に戻るつもりはありません。
戻れる気がしません。
…もしも看護や介護と全く畑の違う仕事だったら。或いはもうちょっと頑張れたかもしれない。
そんな風に思う。
まあ、仮定の話をいくらしたところでしょうがないんですけど。