罪を憎んで人を憎まず。
病気憎んで人を憎まず。
認知症憎んで人を憎まず。


口で言うのは簡単です。
頭ではそんなこと分かってます。


でも実際、おむつ外ししてうんこまみれになっていて、きれいにしてあげようにも抵抗して大暴れして、人手がないって言うのに5人がかりでおさえながら処理をしなければならないときには、そんな理想論はすっ飛びます。

獣のように唸りながら噛みついてくるお年寄り。
食糞して顔中を真っ茶色にしているお年寄り。
ま〇こま〇こま〇こ! と1日中卑猥な言葉を叫んでいるお年寄り。

ああ、人はここまで壊れてしまうのか。

がっかりします。悲しくなります。腹が立ちます。

知性があることが人の特徴なら。
すっかり知性と理性を喪くしてしまった彼らはなんなのか。もう人ではないのか。犬猫と一緒か。
いや犬猫のがずっとましです。犬猫は便を壁一面に塗りたくったりはしません。



…そんな風に、世話する側が負の感情にとらわれてしまったときの対処法を、学生時代に先生方から幾つか教えて貰いました。

1番具体的な方法が、タイトルにした「現役時代の写真を貼る」というものです。

その写真は。
お年寄り自身が見るためのものではありません。
お世話する側が見るために、そこに置きます。

その人が社会のために働いていた頃、家族のために働いていた頃の写真を見ると、その人が最初からずっと認知症だったわけではないという当たり前のことに、あらためてハッと気付けるのです。
その人が好きでその病気になったんじゃないこと、誰でも望まなくてもその病気になってしまう可能性があること、自分だってなってしまう可能性があることにあらためて気付けるのです。

そうすると自分の中の怒りや絶望、嫌悪といった負の感情がスッとトーンダウンして、冷静な気持ちでお世話ができるのです。