浅見光彦シリーズという探偵ものというか推理もののシリーズがあります。
あれ面白いですよね。

こういう長期にわたるシリーズ物は、登場人物たちがちゃんと歳を取るパターンと、全く歳を取らないパターンがあります。
後者の代表がサザエさんですね。この光彦シリーズとか、こち亀なんかもそうですね。

光彦さんは33才。
お兄さんの陽一郎さんは47才。
お母さんの雪江さんは72才。
第一作の『後鳥羽伝説殺人事件』の時から、2015年の『孤道』まで、この年齢は変わりません。

第一作の『後鳥羽伝説殺人事件』は1982年です。昭和57年ですね。
昭和57年時点で33才の光彦さんは昭和24年生まれ、47才の陽一郎さんは昭和10年生まれ、雪江さんは明治43年生まれと言うことになります。
この年齢設定が絶妙であることはおわかり頂けると思います。

2度の大戦と関東大震災を経験した雪江さん。
第2次大戦前中後のどん底とそれに続くめざましい復興を見てきた陽一郎さん。
戦争の貧しさ悲惨さを知らない世代の光彦さん。
言い換えると、
質素倹約を旨としてひたすら厳しいお年寄り世代。
しっかり者で社会や家庭を支える現役世代。
ふわふわして浪費家の若者世代。


「今時の若いもんは!」とお年寄りが愚痴るのがぴったりはまる世代構成ですね。




しかし。
本題はここからなのですが。

この3人をそのまま現在に持ってくると、微妙なことになりますよね。

2018年。72才の雪江さんは昭和21年生まれ。…かつての光彦さんの世代です。右肩上がりに伸びる経済成長とそれに後押しされた大量消費社会を生き、そしてバブル崩壊の煽りを致命的なまでに受ける前に現役世代を抜けた世代です。
47才の陽一郎さんは昭和46年生まれ。高度経済成長期のイケイケの時代と、バブルの崩壊やベルリンの壁崩壊やソ連の崩壊の時代を生き、栄枯盛衰を身をもって知ってしまった世代です。
そして33才の光彦さんは昭和60年生まれ。…物心ついたときにはもうバブルははじけ、金利も出生率も経済成長率もどん底の時代しか知らない世代です。



「今時の若いもんは!」
という慣用句が全く当てはまらないのが現在なんですよね。
贅沢で浪費家なのは光彦さん世代でも陽一郎さん世代でもないんです。雪江さん世代なんです。

今や若者や現役世代が
「今時の年寄りは!」
と嘆く時代なのです。

なんでこんな記事を書いているかというと、うちの母を見てると、贅沢好き買物好き消費大好きで、しばしば唖然とすることがあるからです。
実の親だから嫌いにはなりませんけど。内心ではよく愚痴ってます。