もうこの歳になってしまえば誰も結婚しろとか子を産めとか言ってきませんが、若い頃は親戚の家に行ったりするとやいのやいの言われました。

しかしどこの親類宅も、夫と妻では温度差が。

叔父は客間で気持ちよく晩酌しながら
「結婚てのはいいもんだぞ。結婚はやっぱりした方がいいぞ、お前も早く結婚しろ」

台所に居る叔母は、叔父に聞こえないようにぼそりと
「結婚しなくてもいられるならしなくてもいいよ。しないほうがいいよ。無理にするほどのもんじゃないよ」

…私の周囲の既婚者の反応は概ねこんな感じで、男性は「とりあえず結婚しとけ、とにかく結婚はしておけ」、女性は「したくないなら別にしなくても…」と言うのでした。

既婚者というのはすなわち結婚経験者です。
その経験者の女性達がこぞって「無理にしなくていいよ」と言っているのです。
私としては未だ未体験の結婚への夢や希望より、経験者の意見の方が信憑性が高いと感じられました。

又私の母は恋多き女性で、何度も男を変え、当然離婚再婚経験者です。
複数回結婚を経験した母も、「結婚はいいものだよ」とは1度も言いませんでした。

そんな中で、たった1人だけ、「結婚ていいもんだよ」と言った既婚女性が居ました。
バイト先の先輩で、歳は一回り離れていました。結婚して子供が2人居ました。
「○○子ちゃん(私の名前です)、結婚ていいもんだよ。自信も出来るし。自分の居場所が出来たから」
と言いました。

その先輩は美人で明るくて元気で、生まれたときから今までなんの悩みもないように、私には見えていました。
そんな先輩にもかつて自分の居場所がなくて、自分に自信が持てない時があったのか。胸がつかれる思いがしました。
ただ闇雲に「結婚しろ」という親戚の叔父さんより、「これこれこういう理由があるから結婚はいいもんだよ」と、根拠を提示してくれた彼女の言葉には説得力がありました。
又、彼女は「自分は結婚して良かったと思っている」というあくまでも体験談として語ってくれました。
「結婚した方がいいよ」とも「しない方がいいよ」とも言いませんでした。

後にも先にも、結婚を肯定した既婚女性の知り合いはその人だけです。
1人だけなので印象が強くて、いまだに思い出します。