昨年、秋。
攻撃性の高い父を受け入れてくれる奇特な施設を探して。ケアマネさんや施設探し専門の方たちと、私は来る日も来る日もかけずり回っておりました。
探しては断られ、探しては断られの繰り返し。
もう受けてくれるならどこでもいい、評判が悪かろうが施設長が宇宙人だろうが神話生物だろうが構わない、それくらい切羽詰まった気分でした。

しかしたった1ヶ所だけ、私のほうからお断りした施設さんがありました。


入所合否を決めるために事前に本人と施設の方と面談をするわけですが、その際に父が(私の居ない間に)言ったらしいのです。

「女房が俺の財産を持ち逃げした。行方をくらまして今どこに居るか分からない。俺は今3千円しか持っていない」


面談した施設の方は真顔で私に言うのです。
「支払いがきちんと出来そうにない経済状況の方はちょっとねえ…。そこが大丈夫なのが確認できれば、またあらためて合否は考えてもねえ…」

因みに真相はこうです。
父が入院した病院に、母も入院した。
選んでその病院に入院したわけではなく、救急搬送されたのがたまたまその病院だった訳ですが、同じ病院の同じ病棟に入院すれば、当然父も母が入院したことを知ります。
2週間後。母は退院します。父はまだ入院しています。
「俺の許しも得ずに退院しやがって。どういう了見だ!」
父は怒っていました。
「俺は1人こんなところに残されて。金も持っていないのにどうしたらいいんだ、この野郎!」

母は勿論、父の財産を持ち逃げしたりはしていません。
と言うかそもそも我が家に持ち逃げできるほどの財産なんか有りません。
強いて財産と呼べるとしたら、父の年金の振り込まれる通帳だけですが、それは母から預かって私が管理していました。
そこを何度説明しても、父には「てめえは嘘つき野郎だ!」と理解して貰えませんでしたけどね。

施設の方にも、最初にちゃんと私は説明をしたはずなのです。
父の攻撃性、妄想言動について。
それから支払い関係は私が責任を持ちますから、ということも。

ですが施設の人は、父の虚言妄言を真に受けて支払いの心配をしているのです。
勿論面談をしたその方が、実際施設で入居者のお世話をするわけではないでしょうが、そういう方のおつとめしている施設さんってどうなの? と思ってしまいました。

その1ヶ所だけは私のほうからお断りしました。