母は元々太っている人でした。
私が実家に居た頃には、恐らく70キロくらいあったと思います。森の熊さんのようにどっしりしてたくましいイメージしかありませんでした。

けれど昨年秋。救急搬送されたと職場に連絡が入り、駆けつけた時、彼女は枯れ木のように痩せていました。44キロしかありませんでした。

父をずっと家で介護していた。
父が肺炎になり1週間前に入院させた。
そこで力尽きた。動く元気が無かった。
1週間何も食べていない。
お風呂は1ヶ月前から入っていなかったかも知れない。
最後の方はあまり覚えていない。
――母の話をまとめるとそんな感じでした。

でも一応意識はしっかりしていて、疎通は良好でした。
酸素や点滴付いてたけど、今にも死にそうって状況では無かったです。少なくとも危篤とかそれに近いレベルまで落ちてはいなかったです。

…なのですが。
最近になって母は言うのですよ、「実はね」と。



不思議な体験をした。
救急搬送されたことも救急センターのベッドに移されたこともちゃんと分かっていた。
先生の話も聞こえていた。○○子(私のことです)が来たのも分かっていた。

でも自分は宙に浮いていて、上からその光景を見下ろしていた。

自分が浮いていることに、その時は何ら疑問を感じていなかった。




――それって話によく聞く臨死体験にそっくりじゃないですか?


私は、証拠が提示できないので、臨死体験なるものがあるとも無いとも言えません。
ただ、母からそういう話を聞いたと書くだけにとどめます。